心にささる言葉たち
ガンと診断されてから、人の心が透けて見えるようになった。
私も親身になっているつもりで寄り添った言葉を精いっぱいかけてきたつもりだったが、見え見えの偽善者だった。本当に恥ずかしい。
ガンだと打ち明けると、たくさんの言葉をかけてくれる。
自分の治療方針と違うことを言われるのは耳が痛い。
みんな自分の価値観を押し付けてくる。
「手術をしたほうがいい」
「抗がん剤はしたほうがいい」
「友達は手術をして元気になってるから」
「食べないと体力が続かない」
「芸能人はそれでなくなってるじゃない」
何度、自分の方針を説明しても、こういう人は聞く耳持たない。
自分が正しいと思い込んでいる。
自分が一番悩んできたのに、大してよく知らない人に説教をくらう。
ガンを患い、20キロ近くやせてしまった私は自分でもどうなってしまうのか心配だった。
「やせたけど、大丈夫?」
この言葉は私の不安をあおった。
周りの人は私の事を死んじゃうんじゃないかと思ってる、そう思い込んで自分を追い込んだ。
「元気なうちに会いたかった」
こんなことを言って会いに来た人もいた。
私がどんどん悪くなるって思ってる。
「体調大丈夫?」大きな声で声をかけてくる人もいる。
みんな思いやりの気持ちで言っているのかもしれないが、私にはささる言葉たち。
元気な時にはわからなかった偽善的な言葉。言われた言葉の裏が聞こえてくる。
これは私の心がすさんでいるからなのか、本当の声が聞こえるようになったのか。